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消えた風の子：第２部・提言／１　児童文学者・加古里子さん　時間に追い立てられ遊ぶ場所や仲間が少ない、今どきの子どもたち。そんな彼らにとって外遊びの意義とは何か、どうすれば遊びを取り戻せるのか。識者からの提言を４回に分けてお届けする。　　◇大人が変わった　　◇遊びで身につける創造力や社会性、もっと認めなければ　　−−子どもにとって外遊びとは。　　外遊びをせずに子どもが育つということは、放牧せずに生き物を育てるようなもの。自然の中で土に触れ、風や光を浴びながら、体力や成長に応じた動きを、気のおもむくまま満足するまでやる。それによって心が解放され、子どもは伸びやかに成長できる。だから外遊びは欠かせない。　　−−加古さんは半世紀かけて、全国の大人や子どもから石けり約３万、鬼ごっこ約６万の回答を集め「伝承遊び考」シリーズにまとめた。調査から見える子ども像は。　　石けりは代表的なものだけでも２６００型あった。「もっと楽しく」という一人一人のあくなき探究心がこれほどの数の遊びを作ったのだと思う。このすばらしい創造力を、大人はもっと認めなければいけない。工夫する力は、人間の生きる力なのだから。　　また「幼い子も得がたい仲間」と受け入れる文化があった。たとえば石けりでは、片足跳びが難しい幼い子用に、別の経路が用意された例も多数報告されている。子どもたちは多様性を受け入れる社会性を、遊びを通して身につけてきた。　　−−しかし最近は石けりをする子を見かけない。　　夕飯を忘れて遊びほうける子どもはいなくなった。子どもは大人をよく見ている。鬼ごっこをしたり、トンボを追いかけたりしても、大人は喜んでくれないと気づいているのではないか。　　−−異なった年齢同士で遊ぶこともあまりない。　　年長の子が幼い子と遊んでいると「何で年下と遊ぶのか」と嫌がる親が多い。子どもたちはそれを知っている。大人が社会の多様性を好まないから、子どもも排他的になってしまう。　　−−なぜ子どもの遊び文化が貧困になったのだろうか。　　戦争を経験した世代が親になった時、まず「自分の時は何もなかったからこそ、子どもには与えたい」と考えた。その結果、物品や教育を与えることが最優先されてしまったのではないか。　　−−遊びを取り戻す方法は。　　子ども自身は変わっていないと思う。大人の目を気にして「遊びたいけれど遊ばないでおこう」という気持ちが強くなっているだけだ。町中の小さな単位であれば取り戻す可能性はある。遊びのリーダーを作ることも一つの方法だと思う。【聞き手・望月麻紀】＝次回は３月９日に掲載　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝　　■遊びレシピ・ケンパ　　石けり遊びの一種。地域によってかたちやルールはさまざまだ。　　図のような形を地面に描く。ジャンケンなどで順番を決め、スタートラインから１のマスに石を投げ入れる。うまくマスに入ったらそのマスは飛ばし、片足（１、４、８のマス）と両足（２と３、５と６、６と７、９と１０のマス）交互の跳び方で進む。１０まで行ったら、向きを変えて戻ってくる。石を入れたマスの手前のマスまで来たら石を拾う。次は２、３……と石を投げ入れるマスを順番に進め、最後の１０まで早く行った人の勝ちとなる。　　石が目的のマスに入らなかったり、線を踏んだり、石を入れたマスに入ってしまうとアウト。次の人と交代しなければならない。２人で遊ぶ場合、アウトになっても自分の石をそのまま残し、相手の石が入ったマスも踏んではいけないというルールにすればより難しくなる。　　石によって跳ね方が違うので、記者は「マイ石」をこだわって探した記憶がある。【反橋希美】　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝　　■人物略歴　　◇かこ・さとし　　１９２６年福井県生まれ。東京大学工学部卒。工学博士。会社勤務の傍ら、絵本作家の道に。７３年退社し執筆に専念。代表作に「だるまちゃんシリーズ」など。　毎日新聞　2008年3月2日　東京朝刊